音名・階名ってなに?
ドレミの歌でもお馴染みの「ドレミファソラシド」。これらは音を表す名前として親しまれています。
この「ドレミファソラシド」は、単に音の名前を表すだけではなく、音の役割(機能)を示すためにも用いられます。では、音名とは何か、階名とは何かを紐解いていきましょう。
*こちらのブログの内容は、聴育空間「みみラボ」のトピックをブログ化したものです。動画でご覧になる方は
音名
絶対的な音の高さを表す名前
調とは分離された状態での音の高さ(何調であっても音の高さの名前は同じ)
階名
決められた調の中でのドレミファソラシド。
主音に選ばれた音に対する相対的な音の高さを表す名前
*主音:調の音階の中での一番最初の音。一番重要な音。
音名以外に「階名」が存在する理由
音を表す名前として、なぜ「音名」以外にも「階名」というものが存在するのでしょうか。その理由は、音楽の旋律がどのように終わりをむかえるのか?にスポットを当てると見えてきます。
ここにピアノの鍵盤を2つ用意しました。
①と②では、どちらの旋律が「終わった」感じがするでしょうか?
①は旋律が終わった感じが強く、②は旋律が終わった感じが弱い(旋律がまだ続きそう)と感じられると思います。
さて、①と②の違いは何だか分かりますか?
①の最後の音は「ド」、②の最後の音は「シ」ですね。まとめると、以下のようになります。
音には役割がある
旋律の最後の音が「ド」で終わるか「シ」で終わるかによって、印象が違って聞こえます。印象が異なる理由は、「音の役割」にあります。
調の中の音階における一番最初の音を「主音」と呼びます。その調での主役となる音。ハ長調だと「ドレミファソラシド」の「ド」の音。この音は主役ならではの安定と落ち着きをもたらします。これが主音の役割。
次に「シ」の音は、「導音」と呼びます。導音は、主音「ド」へと導く性質を持っています。聴き手は、「シ」の導音を聴くと次に主音「ド」が来てほしいと強く期待してしまう。そんな性質を持っています。これが導音の役割です。
①では、旋律が主音の「ド」で終わっているため、旋律が終わった感じになります。
②では、旋律が導音の「シ」で終わっているため、旋律が終わった感じはなく、まだ旋律が続きそうです。
これら2つの音には、それぞれ「主音」「導音」という役割を持っていますが、これら2つの音以外(レミファソラ)も、それぞれ重要な役割を持っています。
調が変わると「音の名前」は変わる。
でも「音の役割」は同じ。
調が変わると音階が変わります。だから、音の名前が変わります。ハ長調の「ドレミファソラシド」の音階は、ト長調だと「ソラシドレミファ#ソ」となります。
では、音の役割はどうでしょうか?
ト長調で聴き比べてみましょう。
ト長調の一番最初の音で主役となる音は「ソ」ですね。「ソラシドレミファ#ソ」と弾くと終わった感じがします。次に「ソラシドレミファ#」と弾くと終わった感じがしません。まだ旋律が続きそうな感じがします。
このように、調が変わっても、旋律の最後の音が主役の音かどうかで、終わった感じがしたり、旋律が続きそうな感じがします。
調が変わっても、音の名前は変わっても、主音の役割、導音の役割は変わりません。これが重要なポイントです。
音の役割は理解した。
でも、主音、導音って言いにくい。
音の役割は調が変わっても同じ、ということはお分かりいただけたと思います。しかし、一つ問題があります。音の役割を感じるために毎回「主音〜!」「導音〜!」とは声にだせません。
また、音の名前(音名)で役割を理解しようとすると、頭がパンクしてしまいます。なぜなら、調は全部で12通り(厳密には30通り)あり、各調の音階の最初の音も12通りあります。(ハ長調の最初の音は「ド」、嬰ハ長調の最初の音は「ド#」、ニ長調の最初の音は「レ」というように全部で12通り。これは大変。。。)
12通りの主音を声で発声しながら、主音からの各音の役割を感じるのは非常に難しい。「ト長調ならソが主役、ファ#はソに行きたがる」というような理解をするのは非常に困難です。
ここで「階名」の出番です。
階名は「決められた調の中でのドレミファソラシド」と説明しました。この階名を使えば、どの調がやってきても音階の一番最初の主音を「ド」として読み替えることで、音の役割とドレミファソラシドを紐づけて認知することが可能になります。
ト長調であれば、音名「ソ」が主音となるので「ド」と呼びます。音名「ファ#」が導音となるので「シ」と呼びます。このようにどの調でも主音を「ド」、導音を「シ」と呼ぶことで、音の役割が把握しやすくなります。
このように、階名とは、音の役割に名づけられた名前であり、階名を捉えることで楽曲に登場する各音の役割を感じることができるとても優れた名前なのです。